Bspeak!

Posted on Jan 05, 2022Read on Mirror.xyz

Arbitrum上のステーブルコインSperax

2022年

2022年になって最初の配信なります。今回は少し短めですが、今年も毎週しっかりとメルマガ配信していきますので、どうぞ宜しくお願いします!

2022年の予想を書こうと思っているのですが、1年前のニュースレターでは以下のように書いていました。

2020年は間違いなくDeFiの利用が進んだ年だったと言えます。2021年は、おそらくNFT、また小規模コミュニティが使うトークン(ソーシャルトークンなどとも呼ばれます)が ようやくテイクオフするというのが私の予想です。

これは、DeFiのプロトコルが多く出てきたおかげで柔軟なインセンティブ設計ができたり、ファーミングで流動性を高めるということができるようになったためです。1年前のDeFiに似た雰囲気を、NFTやソーシャルトークン(+DAO)に感じています。

2021年はNFTがメインストリームに浸透した年だったと言っていいと思います。一方でソーシャルトークンはそこまで話題になりませんでした。

その分、今年にずれ込んで、ソーシャルトークンを含めた「クリプト・ソーシャル」や「DAO」が、2022年の大きな話題になるだろうと予想しています。

またインフラ周りをみると、L2、プライバシー、Ethereumのマージなど多くが進む年になりそうです。ゼロ知識証明を使った物理世界では実現できない魔法のようなユースケースが可能になるかもしれません。

さらにメインストリームの人が増えてきているという背景もあり、デザインやUX面で進化するのではないかと思っています。異なるチェーンの利用が簡単になったり、煩雑な処理がいらずにアプリが利用できるようになったり、クリプトをあまり意識せず使える、というようなUXの進化です。ウォレットにもイノベーションが起こるかもしれません。

またユーザが増えるにつれて、一部のサービスはL3, L4などの多層なレイヤーに移行が必要になるかと思いますが、この多層レイヤーを利用するプロセスも抽象化されて、良いUXが洗練されていくと思います。

細かいことを言えば、ガバナンスの進化や、音楽NFT、Loot派生ゲーム/NFTなども盛り上がっていきそうです。

ということで、今年も宜しくお願いします!

■ Last Week in Crypto

1.Aoki, Alameda Back Algorithmic Stablecoin on Arbitrum at $200M Valuation

Speraxは、Arbitrum(EthereumのL2)上のアルゴリズム型ステーブルコイン「USDs」を発表しました。

さらにSperaxは、ガバナンストークン$SPAで、$6Mドルを調達したことを発表しています。Alameda ReseachやJump Capital、DJのスティーブ・アオキなどが投資していて、評価額は$200Mドルとなっています。

Sperax の概要

トークンの担保を預ければ、誰でもステーブルコインを発行することができます。このユーザがロックした担保は、Sperax独自のDeFiアグリゲーターを介して再投資されて、利回りを受け取ることができる予定になっています。

今のベータ版では、発行したいステーブルコインの額とほぼ同額のトークンを担保にして、ステーブルコインを発行することができます。この担保として必要なのは、5%ほどのSPAトークン + 95%ほどの USDC or USDT になっています。

現状はUSDC, USDTのどちらかを選びますが、将来的にはETHやDAIなど他のトークンも追加する予定になっています。

画像:ホワイトペーパー

担保としてのUSDTやUSDC

ホワイトペーパーでは、「USDTなどの法定通貨担保型のステーブルコインは、集権的でDeFiのコア思想とは反するもの」であり、最適ではないため、Speraxのハイブリッド(クリプト担保型 & アルゴリズム型)のステーブルコインを提案しています。

しかしSperaxのステーブルコインも、UDSTやUSDCを担保にすることができるので、結局リスクの性質はUDSTやUSDCと同じだと言えます。この点についてはかなりチームで議論したそうですが、最終的にはUSDTの市場での影響力のほうを選んだようです。つまりすでに市場はUSDTのようなステーブルコインを信頼しているので、(少なくとも短期的には)担保として信頼するという判断のようです。

今後の分散化

Speraxは、採用される担保の決定などの意思決定を、ガバナンストークンであるSPAトークンを使って実施していき、プロトコルを分散化していくとしています。

2022年半ばには、Speraxの開発者は管理キーを破棄し、トークン保有者にガバナンス権を完全に移す予定になっています。

2.Avatar platform Ready Player Me raises $13 million in Series A funding

Ready Player Meが、$13Mドルを調達したと発表しました。GitHubの共同創業者であるTom Preston-Wernerや、NFTのインフルエンサーであるGmoneyなども投資をしています。

概要

Ready Player Meは、仮想空間で使うアバターを作れるようにするプラットフォームです。

ポイントは、**「どの仮想空間でも使い回せるアバター」**を作れるようにする点で、バーチャルファッションの相互運用性のレイヤーと言えます。

「クロスゲーム・アバター・プラットフォーム」とも説明されています。

セルフィーの写真をとってアップロードするか、あらかじめ用意されたアバターの中から選ぶことで、アバターを作成することができます。

すでに利用できますが、いろいろとカスタマイズができて面白いです。

そしてこのアバターが、複数のアプリやゲームなどのプラットフォームで使用することができます。

ちなみにReady Player Meで作成したアバターはNFTではありませんが、対応している一部のNFTを、アバターのカスタマイズのオプションとして使用することができます。このあたりは今後さらに充実していくかと思います。

予定

Ready Player Meは、「ゲームの開発者が、NFTを売って、そのゲーム内のアバターに利用できるようにするためのツール」も開発を予定しています。

開発者がアバターシステムをイチから作るには時間がかかるため、それをモジュール化して、使い回せるように標準化を狙うというのは、良い戦略だと思います。

3.DeFi wallet DeBank raises $25 million in equity funding round

トークンのスワップやポートフォリオのトラッキングができるウォレットのDeBankが、$25Mドルを調達しました。

エクイティによる調達で、Sequoia Chinaがリードし、Dragonfly Capital、Youbi Capital、Coinbase Ventures、Crypto.com Capital、Circle、Ledgerなどが参加しました。

DeBankは、Ethereum、Binance Smart Chain、Avalancheなど、複数のブロックチェーンと、複数のDeFiプロトコルをサポートしていますが、近々SolanaとHarmonyにも対応する予定だそうです。

ちなみに競合には ZapperとZerionがあり、どちらも今年に資金調達をしています。Zapperあたりはトークンを発行するのではないかと勝手に憶測しています。

4.A DAO wants to buy Blockbuster and turn it into a decentralized film streaming service

少し前に、米国憲法の原本を購入しようというDAOが作られて話題になりましたが、また似たような新しいDAOが出てきました。

BlockbusterDAOというDAOで、Blockbuster社を買収して、そこから分散型の映画ストリーミングサービスを構築しようとしているそうです。

※Blockbuster(ブロックバスター)はアメリカのビデオ・DVDのレンタルチェーン店です

このBlockbusterDAOは、Blockbuster社を買収するために、1個 0.13ETHのNFTを販売して、合計で$5Mドルを調達する予定になっています。

また将来的には映画のための資金調達や、制作も計画しているとのことです。

資金が集まりやすくなっているので、DAOが形成されて、すでにあるブランドを買収する(そしてそのブランドはより良くなる)という事例が2022年には起こるかもしれません。失敗もたくさん出てくると思いますが、1つ成功事例ができると、一気に増えるような気がしています。

5.KPI Options as a Mergers and Acquisitions Tool

PieDAOが、BasketDAOを買収するという提案がなされていますが、その提案内容が面白く、UMAプロトコルの『KPIオプション』を利用するという内容になっています。

プロトコルの合併も増えてきているので、少し内容を書いていきます。

背景

背景としては、2021年10月に、BasketDAOの脆弱性をつかれたインシデントがあり、BasketDAOが運営をやめようとしていたところに、PieDAOチームを紹介され、買収の話になったそうです。

その後「PieDAOが、BasketDAOのTVLやコミュニティを取得するための検討する」ということで、双方で合意しました。

プロトコル合併の課題

しかしPieDAOが実際に買収をしても、TVLがすべて移行される保障はありません。

買収される側のBasketDAOは、2つのインデックス商品を持っていて、合計で$3MドルのTVLがありますが、BasketDAOのユーザが、自主的にPieDAOのプロダクトに移行する必要があるからです。

KPIオプションでの手法

そこで今回の提案では、PieDAOが、BASKホルダーにKPIオプショントークンを渡します。

このKPIオプションは、移行したTVLによって、払い出される価格が変動します。少なくとも50%が移行した場合にのみ有効になり、100%移行したら最大100%の支払いが行われます。

つまり買収されるBASKホルダーとしては、PieDAOに移行したほうが得をします。また自分だけでなく、他のホルダーも移行したほうが、自分も得をするので、コミュニティに移行を促すインセンティブとなります。

これにより、PieDAOがBasketDAOのTVLを取得できることが期待されています。

既存金融では、高価な弁護士にお願いをして、複雑な法制度に従ってM&Aをしますが、DeFiではいろいろとクリエイティブな方法がためされていて、今回も両方のコミュニティにとって意味のある賢い提案だと言えます。

UMAのオラクル

このKPIオプションについては、「UMAプロトコルのオラクル」を利用することで、可能になっています。

「移行が100%になったら報酬の100%を支払う」などの今回のような条件では、「どれくらい移行されたのか?」という情報の正確性が重要になります。この数字が操作できてしまったら、意味をなさないからです。

そこでUMAのオラクルでは、操作などがあって紛争が発生した場合には、UMAトークン保有者が投票して決めることができ、公平に執行できるようになっています。

つまり操作するには、UMAトークンの時価総額の多くを買い占めるほどのコストを負担しないといけません。そしてそのコストを払ったとしても、得る対価がコストを上回らない限りは攻撃しても損をするので、攻撃が未然に防がれます。

このKPIオプションについては、例えば「アクティブユーザの数が増加するにつれて、多くのトークンが受け取れるKPIオプショントークンをエアドロップする」、という使い方もできるので、もっと利用されてもおかしくないと思います。

この辺りについては以前の記事もご覧ください(#165 Bspeak! 2021年2月15日号 成果に連動するエアドロップ手法

6.Gas Fees on Ethereum Got You Down? There's a New Airdrop for That

OpenDAOが、クリスマスイブにOpenSeaユーザーにSOSトークンをエアドロップしました。

その数日後に、いきなり出現したGas DAOがエアドロップをしました。2021年12月26日までにEthereumのガス手数料を累計で $1,559ドル以上をつかっていたら、GASトークンを受け取れるというものです。

そしてその後すぐ、支払ったガス代の累計を表示してくれるツール「 fees.wtf 」がトークン発行をするようなツイートをし始めました。

fee.wtfのサイトには、寄付ができるボタンがありますが、そこから寄付がどんどんfees.wtfに集まっているらしく、その寄付で集まったETHの一部を、「流動性の提供に利用する予定」とツイートしていて、独自トークンの発行とエアドロップを示唆しています。

面白いのは、OpenDAOが実施したエアドロップが、ここまで繋がっている点です。

OpenDAOのエアドロップをきっかけに、誰かがTwitterで「Opeaseaで使った累計ではなく、Ethereumで使った累計(つまりガス料金)で誰かエアドロップしてくれ」とツイートし、それがネタのような形でGasDAOに繋がり、さらに本家のfees.wtfを動かそうとしています。

このように多くのDAOも、memeとソーシャルネットワークを起点として誕生していると言えます。

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#210 Bspeak! 2021年12月27日号 Ethereum2.0前の最終テストネット『Kintsugi』

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